物見遊山。
昔の私は性格が悪かった。
と言うより性根が腐っていた。
今だって人に誇れる物など何も無いが、この頃よりは数段まし。
その頃の私は。
いつでも回りの人が羨ましくて。
いつでも自分より誰かが幸せそうに見えて。
彼氏がいて幸せそうな人を見ると。
彼女が知らないとこで彼氏を奪ったらどうだろうと思っていた。
満ち足りて幸せそうな彼女に対して、僅かでも優越感を持ちたかったんだろう。
ほんと下衆な女だ。
自分にだって年上の彼がいたのに。
その人じゃない誰かが、いつも彼より良い男に見えた。
人の彼氏がどれだけ素晴らしいのか。
試してみたかったのだ。
ま、行動力だけはある頃だったので。
実力行使に出ると、たいていすんなりと彼女でもない私を抱いた。
でも一度なびいた男には全く興味が無くなり。
一度限りの相手になる事が常。
彼女持ちの癖に、何て簡単に堕ちるのだろう。
そして何て巧みに「自分は彼女だけ」のフリをするのだろう。
「酔ってたから」
そんな言い訳すら彼女に出来ない状況で、よく手を出したね。
結局どの男もこんなもんなのか。
身体を重ねた男はたいてい嫌いになった。
自分からそういう流れにしといて、何言ってんだろ、と思うが。
男は彼女以外でも簡単に二人きりで会い、簡単にsexするのだ。
まるでくだらない会話の延長のように。
いとも容易く。
いつでも新しい顔、未知の身体。
彼といても、名前すら覚えられない人達でも。
何も満たされなかった。
いつもどっかに隙間が空いてて。
風が吹くとゆらゆら自我が揺れて。
自分の居場所すら解らなくなった。
いつもどこにいていいか解らなかったし。
誰といたら自分らしいのかすら解らなかった。
「やっぱりこの人じゃなかった」
「あの人なら違うかも」
その繰り返し。
その満たされない気持ちを。
親や彼のくれる愛情のせいにするのは簡単だけど。
そうだと言うのも、世界の全てに負けた気がした。
糞面倒な女だ。
私が彼氏なら2日で別れる。
いや2日もいらない。
5時間ぐらいで解る。
結局は全ての人が欲しくて。
誰もいらなかったのかも知れない。
今思い出すと、その頃の私は狂っていた。
なのにちゃんと学校行ってバイトして。
テストもそこそこの点を取って、髪も綺麗にブローして。
必死に普通の子の皮を被っていた。
心には怨嗟の言葉しか無いような、どす黒い底無し沼の人間だったのに。
外見を取り繕う事だけは、この頃覚えたのかも知れない。